『そろそろヤツが やって来る・・・・・・・・・』
朝からの雨
雨が地面を叩く音が静かな村を支配する
『そろそろヤツが やって来る・・・・・・・・・』
村の長老が
雨窓から見える
西のあの岩頭山を見ながら
そう呟いた
暑かった夏の記憶も 遠くなり
村は 今年の収穫を終え
秋の深まりも 感じるこの季節に
毎年 長老は呟くいた
この村に吹き始めた
どこか今までと違う
異質な風が長老の言葉を聞く周囲の者を納得させた
静かに 静かに
ゆっくりと ゆっくりと
近づいている 近づいている
だれもが密かに感じていた
この`地鳴り`を
3日後
村民達は 落ち着かなかった
その日は誰もが 朝から`地鳴り`を
感じていたからだ
決して口にはしないものの
ゆっくりと ゆっくりと
近づいている 近づいている
村のすぐ西にそびえる岩頭山の向こう側から
きっとヤツがいる
山の向こう側には
きっと
この風と`地鳴り`は そのせいに違いないと
村の誰もが 感じていた
誰もが
急にこの`地鳴り`が うめき声の様に叫んだ
ついに ヤツが・・・・この村に
岩頭山から
巨大な`ヤツ`が顔を覗かせた
「ギュオ〜ン」ヤツの叫び声が 辺りに響く
「ひょうがまじんが あらわれた」
「ひょうがまじんが あらわれた」
「ひょうがまじんが あらわれた」
「まものたちは いきなりおそいかかってきた」
「ひょうがまじんは ふぶきをはいた」
「ひょうがまじんは ふぶきをはいた」
「ひょうがまじんは ふぶきをはいた」
こうして 今年も村に 一面の雪景色とともに
冬がやってきた